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食品界漫歩

フードリサーチ」2007年5月号より

漬物の新しい本ができる

今から20年程前のこと。岩波書店から宇都宮大学農学部教授前田安彦氏の「新つけもの考」が岩波新書として出版された。

本文232頁、これに漬物の索引4頁が付いている。先日、改めて読み返してみた。これは、当時、保存食品としての漬物、家庭漬の漬物から、プロの手による、加工食品として漬物類が急速に変化する中で、「嗜好食品」として作られた「新つけもの」について紹介し推奨している唯一の本であったと思う。

漬物業界は、専任の技術者がいず、経営者が兼任するような時代が続いてきた。たまに研究室でも持って、大学出の技術者をと考える経営者がいても、現場のバッシングですぐに退職してしまう状況だった。そんな経営者を導きながら一社一社育ててきたのは前田安彦教授だった。

低塩志向の消費者に対して、高塩分のイメージの先行きは厳しい。前田氏のこの本が出版されたのは、ようやく大型の冷蔵庫が業界に導入されはじめた頃だった。瞬く間に普及して近代化に向かったが、2000社の漬物企業の中で年商100億円以上はわずか2社。年間15億円以上が50社、このような業界が、「新つけもの」への切り替えを完了したのは奇跡に近い。これで業界は躍進したのだ。

高塩塩蔵原料の塩抜き、プラスチック包装と加熱殺菌、そして冷蔵庫の使用という技術の導入によって、「新つけもの」を生み出し、今日の漬物業界の基礎を築いていくことに成功した。

しかし、現在は全国的に売れゆきの流れが変わり、売り上げは激減している。この時にあたり、前田安彦氏の新しい漬物の本が食品研究社から出版できることになった。低迷する暗雲を払い除けて、再び「新々つけもの」として、業界のみならず、食品加工に新しい風を送り込むことができるのではないかと期待し、また、その一助になればと思う。

株式会社食品研究社 社長 園田昭司

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