「日本人の食事は常に清潔にして且つ美を尽くせり」
これは、室町時代末期に渡来したヨーロッパ人ジーン・クラッセ(イエズス会)が日本人の食生活を書き残した一節だ。
「食事は節制と常食は米および野菜にして、海辺に住む者は魚を食す。彼らは二本の小さき棒を使って食し、食物に手を触れるを不実なりとす」と本国に手紙を書いている。
冬季以外は、常に食中毒に注意する必要のある日本の食の方法は清潔でなければならないので、香辛料の存在が重視されてきた。
「和名抄」というわが国最古の分類体の漢和辞書に「魚の生食には、香辛料の使用は必須である。(小泉武夫・食に知恵あり)という。日本人は刺身を食べるのに山葵(わさび)や生姜、芥子菜などをおろし、これを薬味としてつけて食べる。
おろすことで特有のツンとくるにおいと鮮やかな緑の色が日本料理特有の香辛料として愛されてきた。「生のまま生きた香辛料をすりおろして、その場で味わってしまう。これほどゼイタクな味わい方をする民族は、世界の中でも日本人ぐらいのものである」と小泉(前出)氏はいう。
この山葵とともに、日本特有の香辛料として山椒があるが、これは「ピリリと辛くて美しいほどの芳香」をもつ。英名ではジャパニーズ・ペッパーと呼ぶほど純日本的香辛料である。縄文時代の出土器にこの種子の付着がみられ、当時から香辛料として使われていた。
奈良時代には煮物や漬け物に山椒が使われ、香辛料としてだけでなく、保存料としても利用されていた。山椒は「悪気を下し、寝食を治し、薬として食されていたが、解毒、殺菌、防腐に効あり」とされてきた。
小泉武夫東京農業大学教授は「日本人は昔から、目にも見えない有害な微生物を香辛料という華やかで価値のあるもので退治してきたのである」といっている。
食品研究社 社長 園田 昭司
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