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「フードリサーチ」2010年2月号より
食べものの名前と地名の縁


いま、行政上の事情から新しい地名が次々とでき、その反面、由緒のある古い地名を残したいという声もあがって地名への関心が高まっている。そしてその地名と縁が深いのが食べ物の名前だ。

「さつまいも」「安倍川餅」「日野菜さくら漬」「野沢菜」「奈良漬」「広島菜」「温海蕪(あつみかぶ)」「吉野葛」「吉野鮨」「吉野うどん」「鳴門」(蒲鉾)、「イカの鳴門巻」「牛肉の鳴門巻」「船場汁」「柳川鍋」「御手洗団子(みたらし団子)」など。

おいしい地名では「味舌」「味生」はアジシタ、アジオという。古い由緒ある地名だ。大化元年(645年)に難波(大阪)に都を移した時にあった地名だ。

地名と食品の関係では、その食品の産地の名をつける事が多い。東京農業大学の小泉武夫教授は「漬物なくして人類の食卓はなりたたない」と言っているが、食卓から姿を消す伝統食が多い中で、漬物だけは例外だ。

地名をつけ易いのは奈良県の「吉野」(よしの)で、特産品に「吉野葛」がある。和菓子の「吉野葛」や、吉野川の鮎を使った「吉野鮨」、あんかけうどんを「吉野うどん」ともいう。あんが吉野葛だ。

蒲鉾の「鳴門」はどこを切っても切り口に同じ模様が入っている。それが赤い渦巻きになっている。イカの鳴門巻や牛肉の鳴門巻まである。

「船場汁」は塩鯖の中骨と頭だけを短冊に切った大根と一緒に煮た潮汁。大阪の問屋街の船場の奉公人たちが食べさせられたものだったが今はいい鯖をたっぷり使った高級な吸い物。「泥鰌鍋」は「柳川鍋」ともいう。泥鰌と牛蒡を煮て、溶き卵でとじたもの。柳川は福岡県南西部の古い町で、泥鰌の名所ではないが浅い土鍋に特徴があり、当初柳川で作られたので柳川鍋となったという説と、天保年間に江戸の横山町の柳川という店が泥鰌の鍋煮を売り出したものという説がある。

食品研究社 会長 園田 昭司